・前回は、「ピエールがプラトンから『今を生きている幸福』を学んだ」というお話をしました。
・今回はその続きです。
【心のなかに神を発見する最大の幸福体験】
・ピエールは、捕虜収容所で、どんな環境下でも幸福を感じることのできる悟りの境地を学びました。
・その後、フランス軍が壊滅し、ピエールは自由の身となり、そこでほんとうの幸福な境地を得ます。
・「戦争と平和」では、その境地について次のように語られています。
もう誰もあすの自分を追い立てる者はない、だれも自分の温かい寝床を奪いはしない、午後の茶や夜食は間違いなく自分を待っているのだ、・・・
喜ばしい自由の感じ、人間固有な奪うことのできない完全な自由の感じ、モスクワ出発後はじめての休憩の時に経験した自由の意識が、健康の回復につれて彼の心にしみてきた。彼はいっさいの外部の状況に支配されないこの内面の自由が、今はさらに外面の自由を加えて、ありあまるほどのぜいたくにみちみちているのに驚いた。
以前彼がたえず苦しみ求めていたもの、すなわち人生の目的は、いま彼にとって存在しなかった。・・・
彼は目的をもつことができなかった。なぜといって、彼はいま信仰をもっていたからである。それは何らかの法則や言葉や思想に対する信仰ではなくて、常に感知しうる生きた神に対する信仰であった。以前、彼はみずから課した目的のなかに神を求めていた。この目的の探究は要するに神の探究にほかならなかった。ところが、捕らわれの身となっているうちに、とおい昔に乳母が言って聞かせた言葉ー「神様は、ほらあれです。そこにでも、どこにでもおいでになります」ということを、言葉や理屈でなく直感をもって忽然と悟ったのである。
彼は捕らわれの身となっているうちに、カタラーエフの内部にひそんでいる神の方が、フリーメーソンの認めている宇宙の建設者よりも、はるかに偉大で、無限で、とうてい捕捉しがたいものだということを知った。
・以上の言葉の説明は次回にします。