MS221a フリーメーソンと出会うまで

2 ピエールの悟りへの道

・まえがきで、「戦争と平和」には「フリーメーソンの秘密」が隠されている』というお話をしました。

・この節では、「戦争と平和」の主人公ピエールが、フリーメーソンと出会ってから悟りに至るまでの過程を紹介します。

① ピエールとフリーメ―ソンの出会いと天上界からの啓示

【フリーメーソンに出会うまで】

・はじめに、ピエールがフリーメーソンと出会うまでの過程を紹介します。

・ピエールは、大貴族のベズーホフ伯爵と庶民の女性との間に生まれた私生児です。

・ベズーホフ伯爵に後継ぎがいないためにすごい財産を継ぐことになるのですが、貴族社会に受け入れられない独特の人生観を持ち、ほんとうの幸福を求めて人生をさまよいます。

・本論では、「『戦争と平和』で書かれいている悟りの内容は仏教の悟りの内容と同じである」という主張をしていますが、ピエールの生涯は、お釈迦様の生涯と似ているようなところもあります。

・ピエールの夫人のエレンは絶世の美人ですが、かなりの俗人です。
・ピエールとは財産目当てで結婚をし、社交界の花形となり、他の男性との浮き名を流します。

・そのうわさのために、決闘をして相手に傷をおわせたたピエールは社会から非難を浴びるようになります。

・そうした環境や妻から離れようとして家を出たとことでフリーメ―ソンの会員と出会います。

MSC22 奇跡物語・目次 第2章・第2節

第2章 絶対幸福への道

1 心の法則と絶対幸福への道

2 トルストイの描いた絶対幸福への道

① フリーメーソンとの出会いと天上界からの啓示
【フリーメーソンとの出会いまで】
【フリーメーソンとの出会い】
【フリーメーソンの三つの目的】
【フリーメーソンでの活動と天上界からの啓示】

② 火と水の試練
【欲望にほんろうされる苦しみ】
【正義を実現できない苦しみ】
【極限の苦しみを幸福に変えたピエールの幸福】

③ 絶対幸福の世界へ
【プラトンとの出会い - 今を生きている幸福】
【心のなかに神を発見する最高の幸福】
【神を認識する力】

3 苦しみの底をぶち抜い絶対幸福の境地に近づいた人々

MS213c 「戦争と平和」に描かれている様々な対立

【戦争と平和に描かれている様々な対立】

・前回に引き続き、「戦争と平和」に描かれている対立する人間を紹介します。

◎ ナターシャとマリア

ナターシャ いろいろな愛の幸不幸を経験をして、無限の愛を与える女性になる。
(ピエールと絶対幸福の境地を共有できた人でピエールと結婚します。)

マリヤ 信心深い女性。
(心がきれいな人間の喜びと苦しみがよく表現されています。)

<ナターシャとマリヤの対立構造>
・ナターシャは現実世界に直面をして、無限の愛を手に入れます。
・マリアは信仰の世界に生きようとして、現実社会の問題で苦しみます。
(自分の幸福を考えると、悪魔を呼び込みそうになります。)

・その他、「戦争と平和」で書かれている人間同士の対立には以下のようなものがあります。

〇 自己犠牲で幸福になる人間と不幸になる人間
・マリヤは純粋な心で自己犠牲の精神を発揮して、最後は幸福な結婚をします。
・ソーニャは人の愛を得ようとして自己犠牲的な行動をし、不幸を呼び寄せます。

〇 上流社会のなかでの自我の対立
・上流社会では自分の体面を気に自我と自我の対立が混乱を生みます。

〇 自我の対立をおさえるピエール
・ロストフ家では、ピエールがいない間は自我の対立でみんなが不機嫌になりますが、ピエールが帰ってくると平和がおとずれます。

〇 愛の貴族と自我の使用人
・ピエールは善意から農奴の解放をすすめようとしますが、自己保存の気持ちからそれに反対する使用人は面従腹背の行動をします。
(これはピエールが悟る前のことです。悟った後は違った形で社会改革を進めようとします。)

〇 愛の地主と農奴
・マリヤは農民のためにすべてを与えようとしますが、自己保存にはしる農民たちはフランス軍の言うことを聞いて一揆をおこそうとします。
・それを解決するのは青年将校ニコライの勇気ある行動です。

・他にも、「軍部のなかでの対立」「兵士同士の対立」「軍部と現場の対立」「兵士と捕虜の対立」「光の天使と悪魔に憑依された人の対立」「光の天使と凡人の対立」などで、それぞれの人間模様を描いています。

MS213b 智慧を高める方法

【智慧を高める方法】

・本節の前の方で「宇宙を貫く発展の法則は弁証法的発展である」というお話をしました。

・世の中のものはすべて、「対立するものがあるので存在が明らかになります」
(たとえば光だけの世界では光の存在を意識することはできませんが、闇があれば光の存在がわかります。)

・つまり、対立するものの存在を考えると、世の中がよく見えるようになってくるのです。

・「戦争と平和」の登場人物の数は559人だそうですが、トルストイは、様々なタイプの人間の心の動きとその対立(=人生の幸不幸)を描いています。

・たとえば、代表的な例としては主人公のピエールとアンドレイの存在があげられます。

ピエールは真理を探究する伯爵です。莫大な遺産を手にしながら、多くの困難・苦難に出会い、それをのり越えて悟りの境地に達っします。
(私の印象では、お釈迦様タイプの人間です。)

アンドレイは優秀な青年侯爵です。戦争で大きな傷をうけるが安らかに死んでいきます。
(私の印象では、ヘルメス様*タイプの人間です。)

*ヘルメス様:ギリシャ神話の神様、幸運と富を司る愛と発展の神様。旅人と商業の守護神とされている。

<ピエールとアンドレイの対立構造>
・ピエールは霊的な人間で、死刑直前まで行き、死の恐怖から脱することにより悟りを得ます。
・アンドレイはこの世的な人間で、死を覚悟することにより、執着から離れ悟りの境地に入れます。

・ピエールとアンドレイは、まったく逆の道から同じ悟りを得ます。
・現実社会においては、この違うタイプの人間が連携することができれば大きな仕事ができると思います。

MS213a 仏教の世界観

③ 人生修行の形

【仏教の世界観】

・ここまでにお話してきたことを三つ確認します。

・一つ目は、「絶対幸福に到る道は宗教や学問によって異なる」ということです。
・二つ目は、「人生の目的は魂修行である」ということです。
・三つ目は、「宇宙を貫く発展の法則は弁証法的発展である」ということです。

・この三つの話をあわせると「仏教の世界観」ができあがります。

・それは、「人間は魂修行のためにこの地上に生まれてきて、『苦(四苦八苦)』と出会い、『八正道という反省の秘法』を通じて、『絶対幸福という悟りの世界』にいたることができる」という世界観です。

・もう少し詳しく説明しますと、お釈迦様は「この世は『苦』である」と説きました。
・その苦しみの原因は「お金とか、異性とか、名誉とかに執着している煩悩」です。

・その執着を断つ方法が「八正道」という反省の手法です。

・「八正道」のはじめの道は「正見」といって、ここでお話をしたような世界観を持つことです。
・最後の道は「正定」といって、「正しく定に入る道」です。
・「正定」とは「天上界と交流できるようになる」ということであり、絶対幸福の悟りの境地に到るということです。

MS212c 宇宙を貫く発展の法則

【宇宙を貫く発展の法則】

・前回は、「より大きな見地から見た善を考えるのが正しい道である」というお話をしました。

・そして、世の中のことはすべて、より大きな見地から見た見方をすることができます。

・これを、哲学の世界では「弁証法的発展」と言います。

・弁証法的発展とは、二つの対立するものが相互作用をして発展していくものです。
・これを「正」⇒「反」⇒「合」の形であらわされることがあります。

自然界で言えば、オスとメスによって子供ができます。
政治の世界では、保守党と民主党が対立して法案ができます。
経済の世界では、好況と不況を繰り返して発展します。

学校の勉強でも、スポーツの世界でも、仕事でも、
理想を掲げて(正)、実践をして、失敗をして(反)、反省をして進歩(合)します。

・自由と自由がぶつかりあったときに、必ずwin-winの解決策は存在します。

・これが、神様が創った世界の発展の法則です。
(ヘーゲル哲学の基本的な考え方です。)

MS212b 神様がいるのに、なぜ、戦争が起きるのか

【神様がいるのに、なぜ、戦争が起きるのか】

・唯物論者が信仰している人に対して素朴にぶつける疑問として「神様がいるのに、なぜ、悲惨なできごとが起きるのか」という疑問があると思います。

・「なぜ、戦争があるのか」「なぜ、罪のない幼い子が死ぬことがあるのか」「なぜ、病気で苦しまなくてはいけないのか」等々

・その疑問に対して、宗教家は「魂を鍛えるため」と答えます。
(これについてはこの後で詳しく説明します。)

・しかし、それでも納得しがたいのは「悪人が栄え、善人が苦しむことが多く見える」ということです。

・ここで、もう一つの説明がでてきます。

・それは「悪とは自由と自由の相克である」という説明です。

悪は、自由と自由がぶつかり合うことによって起きるのです。
・世の中には100%の悪人も、100%の善人もいません。
(つまり、「悪人が栄え、善人が苦しむ」と見えるのは勘違いだということです。)

悪とか善は、人・時・所によって決まってくるものです。
・つまり、「善悪は判断基準によって変わってくる」というものです。

・それでは、神様の目から見た善悪というのはあるのでしょうか?
・もちろんあります。

・神様の目から見た善悪とは、より大きい見地から見た判断です。

・たとえば、自分のための善は、周りの人々の悪となることはよくあります。
(つまり、周りの人のための善の方が神様の見方に近いということです。)
・身内の人間のための善が、社会の悪になることもあります。
・刹那的幸福のために一生を棒に振る人も多くいます。
・世のため、人のために自己犠牲の精神を発揮した、イエス・キリストやソクラテスのような方もいます。

・つまり、「自由と自由がぶつかりあって悪が生じたときに、より大きな見地から見た善を考えるというのが正しいなのです。
(これがwin-winの道です。)

・それでは、一般論で、より大きな見地からの善を考えるにはどうしたらよいのでしょうか。
・それを次回に話します。

MS212a 念いは実現する

② 心の法則

【念いは実現する】

・心の法則を実践的に説明するのに一番良いのが、「念いは実現する」ということだと思います。

・「念いは実現する」ということは、現代の幸福論の中心にくるような話です。
(ただし、「絶対幸福」とは別の話です。)
・成功している人はだれでも実感しているのではないかと思います。
(なぜ、不幸を「念って」いないのに不幸になるかは、この章の後の方でお話をします。)

人間の心には力があります。
・「念いは実現する」のです。

・これが、幸福になるために知っておきたい第一の法則です。

・そして、ありがたいことに「人間の心は自由に何でも思える」ようにつくられています。

・隣人を愛するのも、憎むのも自由です。
・失敗した時に、反省しようと思うのも、人のせいにするのも自由です。

・そして、念いは実現できるので、「愛の人になる」のも、「けんかする」のも自由ということになります。
・「向上する」のも、「人にいやがれる」のも自由ということになります。

MS211b 絶対幸福の境地と使命の実現

【絶対幸福の境地と使命の実現】

・「絶対幸福への道筋」はいろいろありますが、結論は同じです。

・「絶対幸福の境地」とは「根源なる神と一体となった境地」です。
・「神様が心のなかにいる」と考えるのであれば、「心のなかにある『ほんとうの自分』を発見する」という表現にもなります。

・「自分の心を探求する」か、「天にある神に祈る」かはそれぞれの認識の仕方の問題です。
(心のなかには神につながる送信器と受信器があると考えていただければよいと思います。)

・絶対幸福の境地は最高の幸福の境地ですが、如来格の人間にとっては、それは必ずしも「人生のゴール」を意味しているわけではありません。
・むしろ使命のはじまりです。

・実際、「お釈迦様は、『宇宙即我』の奇跡体験をしてから伝道を始めます」
・「戦争と平和」の本編は、ピエールが「絶対幸福の境地を得て、結婚するところでハッピーエンドで終わっていますが、エピローグでは社会改革に向かうピエールの姿が描かれています。
・キリスト教の世界では、キリストが目の前に現れれば「コーリング」であり、使命のはじまりです。

MS211a 絶対幸福に到る道はいろいろある

第2章 絶対幸福への道

1 心の法則と絶対幸福への道

① 絶対幸福の世界

【絶対幸福に到る道はいろいろある】

・第2章では、「絶対幸福の境地」にいたる道筋を紹介します。

・絶対幸福への道は一つではありません。

・仏教的には、反省により執着を捨てて悟りをえます。

・「戦争と平和」の主人公のピエールは、捕虜収容所という厳しい環境下でどん底の人生を体験して、そこから「絶対幸福の境地」に達しました。

・ヘーゲルは、思考を重ねることにより「絶対精神」の概念にたどりつきました。

・キリスト教的には、「信仰と愛の実現」により至福体験が経験ができます。

・これが、各宗教や学問の修行の道となると思います。
(詳しい内容は後の方で紹介します。)